同じ生地でシルエットが変わる理由——パターンが決めていること

同じ生地でシルエットが変わる理由——パターンが決めていること

26SSの製品を、生地の欄だけで並べ替えてみます。ウール・シルク・リネンを混ぜた一枚は、スーツにも、ツータックスラックスにも、単品のジャケットにも、フルサークルスカートにも使われています。組成の表記だけを見れば、これらは同じ服だということになります。

けれど、並んだときに受ける印象は互いに似ていません。同じ糸、同じ織り、同じ厚み。それでも輪郭が違って見えるのは、生地より手前で、型紙が別の判断をしているからです。素材の話は語られやすく、型紙の話はあまり語られません。ここでは後者の側から、服の見え方がどこで決まっているのかを見ていきます。

同じ生地から、違う輪郭が出ている

生地が持っているのは、落ちようとする力と、戻ろうとする力の組み合わせだけです。その力をどこで受け止め、どこで逃がすかを決めているのが型紙です。

三種混紡の一枚は、上衣では肩から胸にかけて張らされ、脇で余りが絞られます。同じ生地をスラックスに通せば、腰から下は筒に近い形になり、生地は自重でまっすぐ下に落ちる。フルサークルスカートでは、円周そのものが余りになり、落ちきらなかった分が波として残ります。

スラックスの腰まわりに入るタックも、同じ考え方の上にあります。腰で必要な太さと、脚の付け根で必要な太さは違う。その差を、生地を畳んで納めているのがタックです。畳んだ分は下に向かって開放され、裾に向けて緩やかに絞られていく。どこで畳み、どこで開くかを決めているのは、やはり型紙のほうです。

素材の性質は、どれも同じです。違うのはその性質をどう使うかという設計のほうで、同じ一枚が、張られ、落ち、波打つ。生地の欄に並んだ文字から、この差を読み取ることはできません。

平面を、立体に変える手つき

型紙は平らな紙で、体は曲面です。この差を吸収する方法は、それほど多くありません。切って余りを落とす(ダーツ)、縫いながら少しずつ縮める(いせ込み)、逆に引いて張らせる。おおよそ、この三つの組み合わせになります。

ジャケットで言えば、前身頃の縦のダーツが胸の丸みを作り、肩の縫い目に入れたいせ込みが、平らな布を肩先の曲面に沿わせます。襟が折り返る位置——襟とラペルの継ぎ目にあたるゴージライン——を数ミリ上下させるだけでも、胸元の開く面積が変わり、着丈の見え方まで動くことがあります。

もうひとつ、型紙を布のどの向きに置くかという判断があります。織物は、縦糸に沿った方向と、斜めの方向とで伸び方が違います。斜め——バイアス——の向きはよく伸び、よく落ちる。円を裁って作るフルサークルスカートでは、一枚の中で部位ごとにこの向きが変わっていくため、同じ生地でありながら、場所によって落ち方が揃いません。裾が波打つのは、その不揃いが形になったものです。

紙の上では数ミリの違いです。それが鏡の前では、もう少し大きな差として現れる。パターンを引く作業に時間がかかるのは、この換算が計算だけでは決まらないためです。

サイズの数は、型の性格を表している

26SSでは、スーツとドレスシャツにだけ、3サイズに加えてカスタムの選択肢があります。一方、モッズコートとフィールドジャケットは4サイズで、男女で共通の展開になっています。

この差は、価格でも人気でもなく、型がどれだけ体に近いかを表しています。体に沿わせる型ほど、寸法を細かく刻む必要がある。逆に、体から離して着る型は、一つの寸法で受けられる体型の幅が広くなります。サイズ展開の数は、その型がどちらを向いているかの表示だと考えることもできます。

カスタムを選べるということは、既存の型紙に手を入れる余地を残しているということでもあります。出来上がった服を直すのではなく、裁つ前の紙の段階で寸法を動かす。この順番だと、直しでは届かないところまで変えられます。

同じ型に、違う生地を通す

逆の組み合わせもあります。Harmonieの型には、三種混紡の一枚と、ウール100%のスーパー180'sの一枚、二つの生地が通されています。型紙は同じ、シルエットの設計も同じです。

それでも、袖を通したときの印象は揃いません。ウール100%のほうは弾力があり、折り目が立ち、形が戻ろうとする。リネンが混ざる一枚は、落ちたところで止まりにくく、着るほどに表情が動いていきます。型が同じでも、その型が想定した張力に生地がどう応えるかで、仕上がりは変わります。

型と生地は、どちらかが主でどちらかが従、という関係ではないように思います。片方だけを見て良し悪しを決められないのは、そのためです。

型を、手元に置いておくこと

TRENTE ET UNの最初の一着は、古い仕立て屋に残っていた1980年代の型紙——「ウィンザー」と呼ばれていたもの——を読み解くところから始まりました。気に入った生地があって服を考えたのではなく、型紙のほうが先にあった。そこから起こされた型は、Harmonieという名前でいまも残っています。出発点が素材ではなく型紙だったという順番は、いまの作り方にもそのまま続いています。

私たちは、型を自分たちで設計しています。パリで学んだ技術をもとに引いた型紙を、そのつど生地に当てて確かめ、必要なら引き直す。縫製も大半は東京で、型の意図を直接伝えられる距離のなかで進めています。

生地の名前はタグに書けます。型紙のことは、そこには書けません。それでも、鏡の前に立ったときに最初に目に入るのは、型紙が決めた輪郭のほうだと考えています。


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