ドレスシャツの生地選び——番手だけでは決まらない着心地

ドレスシャツの生地選び——番手だけでは決まらない着心地

シャツの生地にも、スーツと同じように番手があります。80番手、100番手、120番手——店頭やタグでよく目にする数字です。スーツの場合と同じく、数字が大きいほど糸が細く、生地は薄く、滑らかになります。そして同じように、「数字が大きいほど上等」という受け止め方が広まっています。

けれど、ドレスシャツの着心地を決めているのは糸の太さだけではありません。むしろ、番手が同じでも織りと糸の作り方が違えば、まったく別の一枚になります。一日のうち、肌にいちばん長く触れているのはシャツです。その一枚を数字だけで選ぶのは、少し惜しいように思います。

綿番手が言っていること

綿糸の番手は、一定の重さあたりにどれだけの長さが取れるかで決まります。細い糸ほど同じ重さで長くなるので、数字が大きくなる。80番手より100番手が細く、120番手はさらに細い。ここまではスーツのウールと同じ考え方です。

シャツ生地でもうひとつ見ておきたいのが、双糸かどうかです。二本の糸を撚り合わせて一本にしたものを双糸と呼び、「100/2」のように表記します。単糸より均一で強く、毛羽が立ちにくい。同じ番手でも、双糸か単糸かで生地の耐久性と表面の整い方が変わります。番手の数字だけを見て、この表記を見落とすことは意外と多いものです。

細い糸で織った生地は、確かに触れた瞬間は滑らかです。けれど薄くなるぶん透けやすく、シワが目立ちやすく、摩擦にも弱くなる。触れたときの印象と着ているあいだの安定は、必ずしも同じ方向を向いていません。

織りが変える着心地

同じ糸を使っても、織り方が変わると生地の性格は大きく変わります。

縦糸と横糸を一本ずつ交差させる平織は、ブロードに代表されるように、張りがあってきめが細かい。ドレスシャツの定番がブロードなのは、襟や前立てがすっきり立つからです。一方で、交差点が多いぶん糸の動きが少なく、着心地はやや硬めになります。

糸を二本以上飛ばして交差させる綾織は、表面に斜めの畝が出ます。交差点が少ないので生地がしなやかに動き、光沢も出やすい。同じ番手のブロードと比べると、身体に沿って落ちる感覚がはっきり違います。ただし、張りは平織に譲ります。

オックスフォードのように太めの糸をざっくり織った生地は、通気性と丈夫さを持つ代わりに、ドレスシャツとしての端正さからは少し離れます。どれが良いという話ではなく、その一枚をどこで、どう着るのかによって、選ぶべき織りが変わるということです。

繊維の長さと、撚りの強さ

番手と織りの奥に、もうひとつ数字になりにくいものがあります。糸を作る前の、綿そのものの質です。

綿の繊維は長いほど、紡いだときに毛羽が少なく、糸が均一になります。おおよそ35ミリを超えるものが超長綿と呼ばれ、細い番手を安定して紡ぐには、この長さが欠かせません。逆に言えば、繊維が短い綿で無理に細く紡いだ糸は、番手の数字は高くても、毛羽立ちやすく、洗うたびに表面が荒れていきます。

そして撚り。強く撚れば糸は締まって丈夫になり、生地には張りが出る。弱く撚れば柔らかく、肌当たりは優しくなるが、耐久性は下がる。この配分には正解がなく、作り手が「このシャツをどう着てほしいか」で決めています。タグには書かれていませんが、着心地の差の多くはここで生まれています。

綿でなければならない理由はあるか

ドレスシャツは綿で作るもの、という前提があります。長く続いてきた習慣で、それ自体に理由もあります。綿は洗いやすく、肌触りが素直で、糊をつければ襟がきれいに立つ。

ただ、綿には苦手なこともあります。シワが戻りにくいこと、汗を吸うと乾くまで肌に張り付くこと。長時間の着用や、移動の多い日には、この二つが着心地を左右します。

ここで候補に入ってくるのが、細い糸で織ったウールのシャツ地です。ウールの繊維には縮れがあり、伸ばされても元に戻ろうとする力を持っています。座って立ち上がったとき、シワが自然に落ちていくのはこの性質によるものです。また、繊維の内側に湿気を取り込んで表面を乾いた状態に保つ働きがあるため、汗をかいても肌に張り付きにくい。綿と比べれば表面の艶は控えめで、手触りはややドライになりますが、着ているあいだの安定という点では別の答えを出してくれます。

ウールのシャツは扱いにくい、という印象がまだあるかもしれません。それは、かつてのウールシャツが厚手で、家庭で洗うことを想定していなかったからです。細い糸で織られ、洗濯を前提に仕上げられた現在のウールシャツ地は、その前提から離れたところにあります。

私たちの選び方

TRENTE ET UN のドレスシャツ「Serenite」は、綿ではなくウール100%で作っています。超極細のウール糸を使い、家庭で洗えることを前提に仕上げた生地です。ドレスシャツを綿で作らないという判断は、綿を軽んじているからではなく、一日中着ていて崩れないことを先に置いたときに、ウールのほうが自然な答えだったからです。

一方で、カジュアルシャツは綿で、ウエスタンシャツはシルクとリネンを織り合わせた洗えるデニムで作っています。どの素材が上かではなく、その型に何を求めるかで生地を決める。番手の数字は、その判断の材料のひとつに過ぎないと考えています。


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