リネンのシワとどう付き合うか——夏の仕立てが目指すもの

リネンのシワとどう付き合うか——夏の仕立てが目指すもの

夏が終わり、リネンのシャツやジャケットをしまう時期になりました。一度でも袖を通した方なら覚えがあるはずです。朝に整えて出かけても、昼には肘の内側に細かな線が入り、座っていた時間の分だけ腰まわりに横ジワが残る。リネンを着るということは、このシワと付き合うことでもあります。

リネンのシワは、しばしば欠点として語られます。けれど、シワが出る理由をたどっていくと、それは涼しさや風合いと同じところから来ていることが分かります。切り離せないものなら、消すことより、どう出すかを考えたほうがいい。夏の仕立てが目指しているのは、おそらくそちらです。

麻の繊維は、曲がったまま戻らない

リネンは亜麻という植物の茎から取り出される繊維です。前回までに触れたウールの繊維には細かな縮れがあり、引き伸ばされても元の形に戻ろうとする力が働きました。亜麻の繊維にはその縮れがほとんどありません。まっすぐで硬く、伸びにくい。

伸びにくい繊維は、折れ曲がったときにその形を覚えます。ウールのスーツなら一晩吊るしておけば落ち着く座りジワが、リネンではなかなか消えないのはこのためです。一方で、この硬さこそが生地に張りを与え、肌に張り付かずに離れていく感触をつくっています。シワの出やすさと、肌離れのよさは、同じ性質の表と裏だと言えます。

リネンは水分を素早く吸い、素早く手放す繊維としても知られています。汗ばむ季節にさらりとしていられるのはそのためですが、湿気を含んだ繊維は柔らかくなり、身体の動きに沿って折れ目がつきやすくなる。夏にこそシワが増えるのは、偶然ではありません。

シワには、良いものと悪いものがある

すべてのシワが同じではありません。肘の内側、膝の裏、腰まわり——身体が曲がる場所に沿って入るシワは、着ている人の動きの記録のようなものです。何度も着るうちに同じ位置に落ち着き、その人の身体に合った表情になっていきます。

困るのは、動きと関係のない場所に入るシワです。背中に斜めに走る線、袖の途中でよじれたような線。これは多くの場合、生地ではなく型紙が身体に合っていないことを示しています。生地が引っ張られたり余ったりしている場所に、張りのあるリネンは正直に線を残します。ウールなら柔らかさで吸収してしまう小さなずれが、リネンでは見えてしまう。

つまりリネンは、仕立ての精度が表に出やすい素材です。肩まわりに十分な動きの余地があり、身体の曲がる場所に正しくゆとりが置かれていれば、シワは自然な位置に集まります。シワをどう出すかは、生地を選ぶ段階よりも、型を引く段階で決まっている部分が大きいと考えています。

混ぜる、という選択

リネンの性質を残しつつ、シワの出方を変える方法もあります。別の繊維と組み合わせることです。

TRENTE ET UN の26SSでは、リネンをいくつかの形で使っています。フィールドジャケットやウエスタンシャツには、縦糸にシルク、横糸にリネンを通した生地を使いました。シルクのなめらかさと光沢が加わることで、リネンの乾いた表情がやわらぎ、折れ目の角も穏やかになります。モッズコートの一型では、ナイロンとリネンを交ぜて織っています。ナイロンの弾力がシワを抑え、リネンの節が表面に奥行きを残す組み合わせです。スーツの「Harmonie」では、ウール・シルク・リネンの三種を混ぜ、ウールの戻る力にリネンの張りと通気を重ねています。

一方で、MA-1にはあえてリネン100%を選びました。混ぜれば扱いやすくなることは分かっていても、リネンだけが持つ乾いた光沢と、着込むほど柔らかくなっていく変化は、単体でしか出せないものがあります。どの服にどこまでリネンの性格を残すか。それを服ごとに決めていくことが、素材を選ぶということです。

整えすぎない、という付き合い方

リネンの手入れは、ウールとは少し考え方が違います。ウールは繊維が自分で戻るのを待てばよかったのに対し、リネンは水の助けを借りて整えるほうが向いています。霧吹きで軽く湿らせてから吊るす、あるいは生乾きのうちに手で形を整えておく。それだけで、動きの跡は落ち着き、不要な折れ目はかなり取れます。

TRENTE ET UN のリネンの服の多くは、家庭で手洗いができるよう仕上げています。洗うたびに繊維はほぐれ、少しずつ柔らかく、身体に沿うようになっていく。アイロンで平らに押さえ込むより、洗って、吊るして、残ったシワはそのままにしておく。そのほうが、リネンらしい表情が育ちます。

私たちは、シワのないリネンを目指していません。目指しているのは、シワが出ても崩れて見えない服です。肩が正しい位置にあり、生地が身体の動きに素直に沿っていれば、夕方のシワはだらしなさではなく、一日をその服で過ごした跡として見えます。夏の仕立てが引き受けているのは、その差をつくることだと言っても過言ではありません。


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